無茶な工事はNG!大手ゼネコンの抵抗。2024年の労働基準法改正後は建設現場で働く時間の上限が規制され大阪万博に大きな影響を与えます。この記事では労働基準法改正の観点から大阪万博を考えます。
海外パビリオン建設遅延の問題
2025年大阪・関西万博が、かつてない規模の課題に直面しています。2023年7月13日に開かれた記者会見で、海外パビリオンの建設準備の遅れについて日本国際博覧会協会が公式に認めました。当の協会が「遅れている」ということを認め、発表し始めたということです。
石毛博行事務総長は、年末までに工事が開始されれば間に合うとの見解を示しましたが、具体的な道筋は示されず、万博協会の対応の鈍さが浮き彫りになっています。建設業界からは、年末までに工事が再開されたらなぜ間に合うのか、その根拠が見えない、との声も聞こえます。
ドバイ万博の影響と大阪万博の課題
準備が遅れている理由について石毛氏は、先行するドバイ万博の影響を指摘しました。予定よりも一年遅れで開催されたドバイ万博の影響で、大阪・関西万博への準備時間が通常よりも短縮されてしまったとのことです。
つまり、ドバイ万博に出店していた各国に、その負担が大きくのしかかり、体力を消耗させてしまっている、ということです。
加えて、ドバイ万博では会期終了後も利用される建物が存在したのに対し、大阪・関西万博では終了後に撤去する仮設の建物を建てるため、一部の参加国が準備時間が短くて済むと誤解していた可能性があると述べました。
実際には、万博用の建物は複雑なデザイン設計のものが多く、そんなに簡単には建たない、ということです。
建設業界の課題と展望
現状では、万博協会は準備が遅れている参加国に対し、デザインの簡素化や予算の増額を提案しています。そして、このような提案が必要となったことについて石毛氏は「残念」との認識を示しました。たしかに、万博というと華やかで今までに見たことのないようなデザインの建築物を観るのが楽しみ、でもありますので、残念な状況です。
一方、国内の建設業者に対しては、大阪で久しぶりの万博という機会を踏まえ、「積極的に参加して欲しい」という希望を明らかにしました。しかし、大手ゼネコンの幹部は「いくらお金をもらっても出来ないことは出来ない」という、非常に厳しい状況を示しています。たしかに、昨今の世界情勢やコロナ後の社会事情もあり、物価が高騰しているうえに、業界に体力がないので無理ができない、ということです。
労働基準法改正:働く時間の上限規制
さらに建設をめぐる大きな変化があります。
2024年の4月には、建設業の時間外労働規制が強化される労働基準法の改正が控えています。この改正により、建設業界がさらに厳しい状況に立たされる可能性があります。
改正後の労働基準法に関する最新の変更について説明します。2024年4月以降、建設業に特別な規制が適用される予定です。原則として、建設業界全体で時間外労働の上限が厳しく制限されることとなります。つまり、働ける時間の総量が規制されるということです。基本的にすべてこの上限規制の中で労働しなければなりません。
具体的な数字で言えば、2024年4月から、建設業界全体での時間外労働の上限規制が始まります。具体的な規制時間は月45時間で、年間合計では360時間となります。この規制は非常に厳格で、特別な事情があっても単月で100時間を超える時間外労働は許されません。
特例がないわけではないが…
この原則には特例があります。いわば、例外です。災害時に発生する復旧および復興の事業に関しては、特例が設けられます。
この特例において、災害時の復旧および復興作業に関する時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、そして2~6ヶ月平均で80時間以内という規制が定められています。この部分は、一般の建設業務の規制からは除外されるという点が重要です。
これらの新しい規制と特例は、建設業界の労働環境を整備するための重要なステップであり、大阪・関西万博の成功に向けて、労働者の健康と安全を確保するための重要な課題です。この問題の解決は、業界の健全な発展と万博の成功に向けた努力の一環として、今後の取り組みと連携が求められます。
大阪万博の工事が遅れているからといって、安易にこの特例が適用されるものではありません。政府の働きかけなど、何かがないと厳しい現状とも言えます。
まとめ
大阪・関西万博の準備には海外パビリオンの遅延問題や国内建設業界の複雑な状況といった課題が存在します。ドバイ万博の延期や建設業の労働法規制強化がこれらの問題を一層難しくしています。
しかしながら、これらの課題を克服し、万博の成功につなげることが我々の望みです。これからどのような対策が取られ、状況がどう変化するのか、引き続き注視していきたいと思います。
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